あてどもない自転車旅で気付いた“大事なこと”

移動の手段としての自転車
「旅をしよう」と考えた時に、行先はどうしようか、泊まるところはどこにしようかなど考えることはたくさんありますが、その中でも特に考えるのは「どうやって行くか」ではないでしょうか。
普通は行き方、つまり交通手段を選ぶとき、「公共交通機関」 か「自家用車」が主な選択肢だと思いますが、私が移動手段に選んだのは「自転車」でした。
目的によって移動手段を考える
旅の目的によってどの移動手段にするか選ぶと思いますが、私の旅は「いろんなところを自分の目で見たい、肌で感じたい」が旅の目的でした。
いろんなところを自分の目で見るには、スピードが速すぎず、遅すぎないものが良い。
「車」と「バイク」は速すぎる。
「歩き」は、限られた時間で多くの場所に行くには遅すぎる。
「電車」と「バス」は、ダイヤに縛られて、もっとここで見たいのに!と思っても、諦めなければいけない時がある。
「自転車」だとスピードもほどよい。歩き程ではないものの、人と触れ合うこともできる。
私の旅の目的にマッチしているのは自転車であると考え、着替え・寝袋・調理器具などを積み込んで「ペダルをこぐ」旅に出ました。

自転車で移動生活に出たことで
実際に自転車で旅に出てみると、気づいたことがたくさんありました。
まずは、荷物。衣食住に必要なものは全て自転車に積むことができました 。
この時、モノに溢れた社会に生きていて、最低限必要なものは限られていると気づきました。
(とは言いつつも、今の私は持たない生活はできていません笑)
そして、毎日移動することの可能性。
人は安定感を求め、居場所を欲しています。少なくとも旅に出る前の私はそうでした。
毎日移動するということは、居場所が決まっていなくて不安定な状況になります。
けれども、居場所が決まっていないというのはどこにでも行ける可能性を持っているということ。
例えば、ふと気になった看板を頼りにふらっとお店に入ってみたら、とても素敵な空間だったという体験に似ていると思います。

自転車旅で感じた可能性
私の旅は、泊まるところは野宿(道の駅とか、店舗の軒先など寝るなど地域の方の優しさが不可欠でした)で、ご飯は自炊はもちろん、出会った人にいただいたりすることも多く、人が生きるのに必要なものは限られていること、人は移動しながらどこでも生きていくことができることを気づかせてくれました。
また、今回の旅は消費をしながらの旅でしたが、滞在先で農業や漁業のお手伝いをするなど、生産しながらの旅をする可能性も感じることができました。
「旅」をするには資金や仕事など様々な課題はありますが、あてどもなくなくペダルをこいで、人と触れ合うことのできる自転車旅もおすすめです。
文=中谷翔 写真=中谷翔