2018.03.20 Blog #008

流動的な生き方―FLOW LIFEを「手づくり弁当」で考えてみる

ライフスタイルづくりをお弁当に例えて考える

 多拠点居住、地方暮らし、生業づくり。テレビや雑誌等のメディア、あるいはイベントなどで多様なライフスタイルが提唱されています。一方で、そのようなライフスタイルに関心があるのになかなか踏み出せない人も多いようです。
流動創生でも、多拠点居住や旅暮らし、仕事や居住をもっと自由に流動的に変化させていこうということで流動的なライフスタイル―FLOW LIFE(フローライフ)を呼びかけてきました。しかし、「じゃあ実際どうすればいいの?あまりに突飛すぎて何からどうやって考えればいいのか全然わからないよ…」というみなさんの疑問に十分に応えることができたとは言えません。もっといろんな人が多様なライフスタイルに踏み出すにはどうしたらいいか…

いろいろ考えていましたらふと「“おべんとう”で考えればいいのだよ」と神様が囁いた(気がする)ので、この考察についてまとめてみました。

定型的雇用=幕ノ内弁当

 日本で一番メジャーなお弁当と言えば「幕ノ内弁当」ですね。多くの人が手にしているライフスタイルは言わば「幕ノ内弁当」です。どういうことかというと、ある程度パターン化された、パッケージとしてのライフスタイルを選択しているということ。白いご飯に梅干しがめりこんでゴマをまぶした日の丸ごはん、紅鮭や揚げ物や卵がきれいに並べられ、煮物や漬物などが脇をしめている…だいたいこんな構成だと思います。

これに「東京のサラリーマン」のライフスタイルとして、ごはん枠を「居住」、おかず枠を「仕事(活動)」と見立てましょう。梅干し・ごま・白飯で構成される日の丸ごはんは、例えば「都内沿線の駅から徒歩圏内のマンション住まい」。紅鮭が月給、揚げ物(唐揚げとエビフライ)が年2回のボーナス、卵焼き=残業代が大体くっついていますね。卵焼きがないとちょっと寂しい。煮物=定期代も支給されて、漬物=社会保障も最低限ついている。

ちなみにこれはサラリーマン営業職だけでなく、プログラマーでも技術職でもデザイナーでもライターでも、鮭が鯖だったりする程度の違いなだけで、同じように月給+ボーナス+残業…といった構成であれば「幕ノ内弁当型」と言えます。雇用されることで、セットになったいろいろな仕事や保障を手にしているというわけです。(白飯は会社からセットで提供されるものではないですが、収入がどれくらいか、始業時間が何時頃か、といった事情によって、概ねみんな定型的な居住選択をしているという意味です。)
↓「鮭」と「鯖」が違うだけ

幕ノ内弁当は優秀だけど、個々の事情に対応し難い

 実際、幕ノ内弁当はよくできています。彩りも良くリーズナブル。物凄い偏食家でなければ「全部無理!ぜんっぜん食べられない!」ということはまずありません。雇用方法という側面で見ても同じ。日本の高度経済成長を掻い潜って来た企業が、長い年月をかけて研究に研究を重ね、より効率的でなるべくみんなの納得のいく雇用方法を追求したもの。確かに仕組みとしては優秀なのです。

しかし、幕ノ内弁当を買うのに「ごはんじゃなくて、半分サンドイッチと半分炊き込みご飯がいい(二拠点居住)」「紅鮭いらないから他にも揚げ物入れたい(副業)」という希望はなかなか通りません。

それに、単に個人のわがままではなく、やむを得ない事情で既存パッケージに当てはまらず困っている人もいます。

例えば子育てをしている女性や、親の介護をしなければならない人がそうです。子育てや介護は収入になりませんが、時間を割いてやらなければならない「仕事」とも言え、時間配分は勤め先の仕事とのトレードオフになります。子育てや介護を抱える人が増え、社会課題として認識され始めたため、近年は各社内で育児休暇や短時間勤務等の制度(幕ノ内弁当のカスタマイズ)も用意されてきています。しかし、より個々の特別な事情になると、各社で用意するパッケージでも対応できなくなってきます。

幕ノ内弁当が合わないのであれば、他の自分好みのパッケージを探す、つまり他社への転職や転業というのも手で、転職先が自分の事情にぴったり合ってうまく行く人もいます。とはいえ、やっぱり市販の弁当の中から、サンドイッチと炊き込みご飯が一緒に入っているものを見つけるのは至難の業です。

手づくり弁当でフルカスタマイズ

 本当に自分の好きなものを好きなだけ入れたいなら、自分で一からお弁当をつくるしかありません。
多拠点居住、旅暮らし、複業など、まだパッケージがないけれど、一部の人ががりがり開拓しているライフスタイルはみんな手づくり弁当です。
彼らはパッケージを買うのではなく、自分の望むライフスタイルの実現のために、一つひとつの壁を自前の方法で乗り越えているのです。

みんな「そこまでやるか?」「それ普通自分でやるか?」と言われることを恐れず、自分の好きなものを料理して自分のお弁当箱にストイックに詰め続け、その結果としてユニークな手づくり弁当ができあがっているわけです。

手づくりは大変だけど楽しめる人もいる

 多くの日本人は、小さい頃から習い事でも就学でも就職でも、パッケージを買うことに慣れてしまっているので、そういう人にとって手づくり弁当は結構大変です。おかずの量の調整、食べあわせのよさ、彩りの良さ、コストの管理、朝の忙しい時間につくる手間、冷めてもおいしいおかず、汁漏れしないおかず…
それは現実に戻せば、これまで月給・ボーナス・残業代で振り込まれてきた収入を自分でつくることだったり、必要なスキルの習得であったり、収支バランスであったり、地理的な実現可能性であったり。様々な課題を考慮して、こちらも立たせあちらも立たせ…と組み合わせていかなければなりません。
しかし、このような過程を楽しめる人なら、手づくり弁当はおすすめです。自分で自分のライフスタイルを発明することは、人によってはそれ自体が楽しみであり、人生の醍醐味にもなりうるのです。

手づくり弁当でFLOW LIFEを考える

 流動創生では、「流動的なライフスタイル」=FLOW LIFEを検証・提唱してきました。仕事を小脇に抱えて旅しながら暮らしていけたら、様々な地域で自分の力を発揮できたら…そんなライフスタイルの組み立てにもお弁当=ライフスタイルの考え方が使えます。流動弁当は今のところどこも販売していないので、自分のオリジナルの弁当箱を使って手づくりで作っていくしかありませんが、上手につくるテクニックやヒントもあります。順に見ていきましょう。

◆最近増えている便利な「流動」グッズを使う(技術の活用)
もともと持っている仕事を小脇に抱えて旅する人は、ネットで遠くの人とやりとりする、いわゆるリモートワーク・テレワークをしている人も多いですね。自分で持ち歩くwifiルータや公共wifi、あるいはチャットやファイル共有といったwebサービス等、一昔前にはなかった技術的な恩恵の賜物とも言えます。
これはお弁当で例えると、冷凍食品のような便利なおかずが普及してきたということです。自分ではこれまでなかなか作れなかった少量のおかずが、手軽に安価で利用できるようになりました。こういった便利グッズのおかげで、「職場」のスペースに「勤め先オフィス」ではなく「コワーキングスペース」や「自宅」を詰めることができるわけです。
昨今は日進月歩で便利グッズが増えてお弁当づくりがどんどん楽になっています。うまく活用していきましょう。

◆制度や常識の変化に乗る(制度の活用)
便利グッズの一種とも言えますが、企業の副業許可や労働時間の短縮・自由化等、会社や社会が流動的な暮らし方・働き方を認め、受け入れる制度や雰囲気も、徐々にとはいえ見られ始めています。この流れに乗って制度を利用したり、ハードモードではありますが個別に組織や管理者と交渉してみたりするのも手です。
勤め人のままで流動的な働き方をする人もどんどん現れると思いますし、また過渡期においても、仕事の時間が短くなった分で副業や個人的な活動を始めるとか、空いた時間でスキルを身に着けるといったこともできるようになるはずです。

◆他の人とシェアする
これまでは、自分のランチは自分のお弁当箱に入っているのが当たり前でしたが、気の合うランチ仲間がいれば、主食(居住)やおかず(仕事)を分け合うこともできます。
大袋のパンを買ってきて、みんなで分け合ってもいいわけです。これがシェアハウスですね。
誰かが唐揚げをたくさん詰めてきて分け合うというのも、仕事をシェアするという考え方です。自分一人の手に負えない仕事があれば、一時的なプロジェクトチームをつくる、部分的に外注するといった方法も柔軟になっていくでしょう。

◆もともと持っている経験・技術を転用する
ライフスタイルを変えるためにスキルを身に着けるといっても、それまで縁もゆかりもない仕事を見据えてゼロから積み上げるのは、時間もコストもかかって効率的とは言えません。気合を入れて新しい世界に踏み込むのも素敵ですが、それまでの経験をうまく転用することも検討してみてはどうでしょうか。
幕ノ内型雇用で見られる「営業」職等は、ぱっと見「旅をしながらできる仕事」のイメージがないので「この職歴役に立たないなあ…」と思われてしまいがちですが、実は営業職で見につく収支感覚やマネジメント力は旅暮らしの重要な基盤でもありますし、コミュニケーション能力や、具体的な業界知識も、様々な商売に活かせる可能性はあるのです。
言わば、幕ノ内弁当のおかずとして持っていたカツを卵とじにするようなもの。ひと手間加えてアレンジすると輝く才能があるのです。
既存資源を有効に使って、なるべくエコで負担のない移行にしていくのがおすすめです。

自分に合ったお弁当を選ぶ・つくる

 様々な手づくりテクニックを見てみましたが、大事なのでお伝えしておきたいのは、幕ノ内弁当がすべてではないように、手づくり弁当がすべてでもないということです。手づくり弁当をやってみたけど、やっぱり難しいな…と思って幕ノ内弁当に戻るのも別に悪いことではないのです。
人生は自分がコントロールできない部分でも、どんどん変化していきます。そのときそのときで一番自分にあったやり方、自分や周りの人が幸せになるやり方を選んでいくことが肝要です。
みなさんが素敵なお弁当(ライフスタイル)に出会える・発明できるよう健闘を祈ります。

文・イラスト=荒木幸子(Takshif/流動創生)

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