2019.02.05 Blog #012

関係人口と流動創生の関係~多様化する社会を行き来する

関係人口という考えが広まり、地方系の取り組みとしてはこれまで変わり種だった流動創生も「それって最近言われる関係人口ってやつですよね?」と聞き返されることが多くなり、話が早くて楽になったこの1年です。
講演などで私からも「流動創生は関係人口の一種で…」と説明することも多いのですが、関係人口中の流動創生なのか、イトコなのか親戚なのか曖昧だった部分もあるので、改めて流動創生と関係人口の関係について考えてみます。

流動創生は「変化」、関係人口は「多様化」

流動創生の中心にあるのは「流動」という概念です。この「流動」は、物理的な動きだけでなく物事が間断なく「変化」する状態を指しています。
人は年を重ねてこどもから大人へ、若手から中堅、壮年へ、立場も身体も精神も変わっていきます。日本は昭和から平成へ。為替も株価も日々変動します。大気が移動して四季が巡ります。地球が自転し、太陽の周りを公転しているからです。一言で言えば「万物流転」。

そのわりに、現代社会はたくさんの固定的な仕組みで成り立っているように思います。終身雇用は40年一つの会社にいるという見立てのものですし、住宅ローンは30年住む場所を変わらない見立てのものです。
個人も社会自然も変化しているのに仕組みは固定的となると、いろいろな不都合が出てきます。子供が成長して足のサイズも大きくなるのに小さな靴を履き続けていたら、足を痛めるか靴が傷むかしてしまうのと同じです。
人も、人を容れる地域や会社も、合わなくなったら組み合わせやあり方そのものを柔軟に変えていったほうがいいのではないか、というのが流動創生のそもそもの考えの一つです。(もちろん、なんでもかんでも合わないと我儘を言って無責任に逃げ続けることを良しとするわけではありません。踏みとどまったほうが良い局面もあります。)

一方、関係人口という考えには、田中輝美さんの『関係人口をつくる』(木楽舎)という本や、輝美さんご自身で語られていることとして、「地域に住んでいなくても地域を想って活動している人々を、地域の一員として受け入れてほしい」という願いが込められています。ここから広がり、一定の地域に足しげく通うパターンだけでなく、愛着をもつ段階や、二地域居住として拠点を構える段階など、さまざまなパターンを含めて「それって移住じゃないけれど、地方にとっていいことだよね」ということが呼びかけられています。

前述の通り「変化」を推進している流動創生としては、地域が住民に「他の地域に行ってしまうなんて許せない!」と永住(固定的)を求めてしまう雰囲気は和らいでほしいな…という立場なので、関係人口という言葉で地域の人の頑なな気持ちがオープンになるのはありがたいことなのです。

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関係人口の逆さ階段(すり鉢)モデル

関係人口の多様性を表す階段の図がありますが、ひとつの地域および複数の地域との関わりの流動性については、関係人口の階段を上下ひっくり返した「逆さ階段」、「すり鉢型」をイメージするとわかりやすいです。
なぜひっくり返すかというと、重力は下へ向かって働くからです。都市か地方かに関係なく「居住スタイル」という切り口で考えた場合、多くの人はやはり「ひとところに留まって住む」という形に落ち着きがちです。世の中の仕組みや従来のサービスは定住を前提としていますし、実際に重力に逆らって移動するのは、体力もコストもかかります。
そして、定住状態を底辺とすれば、言わば東京は「階段のない円筒状の大きな穴」のようなものです。加えて都市の企業は、その穴の底にさらに細かく穿たれた穴のようなもの。法律や制度で縛られているわけではありませんが、東京生まれの人でも地方からやってきた人でも、仕事中心の暮らし、一般的な給与体系といった都会の常識は、一度はまると抜け出すことが容易ではありません。

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地方ももともとは同じように円筒状の穴ですが、移住促進が進むにつれて、東京の巨大な穴から這い出して来る人も少なく、移住政策に限界を感じはじめていました。そこにもたらされたのが関係人口の階段の考え方で、これによって円筒がコロシアムのようなすり鉢状になったと言えます。地方への完全移住にリスクを感じて「一番底まで降りるのはちょっと…」という場合も、深入りせず浅い場所にいてもいいよと促せるものです。

この「すり鉢化」は、関係人口という言葉によって地方地域で先行しましたが、都市部の企業にも似た現象が徐々に生まれています。働き方の自由化や多拠点居住の動向です。
つまり都市でも地方でも、これまでは円筒状の穴の底で一つの仕事や暮らしにどっぷり浸かるしかなかった時代から、もう少し浅い場所、すり鉢の段の途中に身を置いて、他の穴の様子を窺ったり、生活の場として他の穴に身を置いたりすることのできる時代になってきたということです。

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流動性を高めるというのは、このすり鉢の上り下りの行き来、そして穴と穴の間の行き来をスムーズにしていくということです。多様性を許す環境は自由ではありますが、これまでの定住しかなかった時代より、自分にとってどこでどんな風に生きるのが良いのかを選び取るのが難しくなります。
それは実際に動いたり身を置いてみないことにはわかりません。移動者自身が変化を恐れず、生き方の経験や知識を増やすことにも、流動化の大きな意味があります。

移動者の選択を尊重する・支援する

「行き来をスムーズにしたら、せっかく関係人口をつかまえてもまた地域から逃げてしまう!」と思ってしまう地域は、まだ「円筒状の穴」の考え方に捉われています。従来の移住促進の行き詰まりを繰り返しても仕方がありません。
それに、地域の人々が関係人口に共感し間口を開きはじめてくれたのは、ハードルを低く見せ寛容さをアピールしようという表面的な動機だけではないようにも思います。そこには、人が自ら生き方を選ぶことを尊重する気持ち、やってくる人々の主体性を信じようという気持ちがあるのではないでしょうか。「うちのまちが一番良いところなのだから、ともかくうちのまちに住めば間違いない」と自分が思っていたとしても、すべての人にとってそうではない、人それぞれだということは、みんな初めから解っていたはずなのです。
思い切って東京の深い穴を飛び出した人たちが、階段を下りたり上ったり、穴を行き来してレベルアップし、主体性をもって活躍するのを信じること、そしてそれを支えること。これが、関係人口や流動創生のムーブメントが地域の未来を照らすものとなるための条件なのではないかと思います。

イラスト、文=荒木 幸子(FlowLife Laboratory/流動創生)

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