2019.03.25 Blog #013

ショートショート:今日のもち子~202X年初夏、流動創生拠点にて

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各地で広がる拠点や地域、働き方の流動化。これからどんな暮らしの可能性があるのでしょうか?X年後の流動創生の拠点を覗いてみましょう―――

東京のベンチャー企業で企画のお仕事をしている、もち田もち子さん。今月は福井の拠点に滞在し、畑のお手伝いをしながらお客さんへの企画提案の準備をしています。

朝は畑で収穫のお手伝い。日頃は頭脳労働なので、単純作業をすることで頭がリフレッシュします。一緒に作業する地域のおじいちゃんおばあちゃんとの話も、「畑に今度は何を植えよう?」「老人会たのしかったわあ」など、とりとめのないのどかな話題に癒されます。知らなかった田舎の慣習を知れることも。

 

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収穫していると、市場やお店に出せない傷のついたトマトや、大きすぎるきゅうりなどがどうしても出てしまいます。もち子さんはやむなく捨ててしまう分を譲ってもらい、拠点に持ち帰ってみんなの食糧にしています。規格外でも美味しさは同じ、鮮度は抜群。毎日旬の野菜を食べるだけで、日頃の一人暮らしの不摂生も解消されそう。

畑仕事で汗を流したら、拠点内の共用のお風呂も使えますが、車で3分くらいのところに早朝からやっている温泉もあります。拠点のシェアカーがあるので、タオルをひっかけて贅沢な真昼のひとっぷろ。

 

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もち子さんは、拠点の部屋の1つを借りています。窓からは青々とした夏の山。電源やwifi、机もあるので、静かな環境でリモートワークができます。朝の作業やお風呂でひらめいた企画案を勢いよくパソコンに叩き込んで、ビデオチャットでオフィスの同僚と打合せ。

 

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もち子さんは畑でもらった傷野菜を拠点のみんなに振る舞っていますが、他のみんなもそれぞれのできることで拠点運営に貢献する習わしになっています。ある人はお料理が得意なので、みんなで一緒に食べるお夕飯をつくったり、ある人は草刈りや掃除をしたり。

 

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IT企業管理職のもちおさんは、1階の居間の一角をつかって、地域のこどもたちのために期間限定でパソコン教室を開講しています。おかあさんたちも一緒にやってきて、日曜の午後はすっかりこどもたちやおかあさんの憩いの場に。地域の人たちとの接点をつくるのも、拠点での貢献活動の一つです。

 

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夕飯はみんなで食卓を囲みます。ときどき、新しい人が流動創生スタッフの荒木さんに連れられて拠点を訪れることもあります。夕方拠点に着いたのは、東京の大企業で働いている若手のもちすけくん。働き方改革推進チームに所属していますが、なかなか話が進まず煮詰まっているとのこと。

もち子さんの所属するベンチャーは、全社的にリモートワークが許可されています。ツールを使って効率よく仕事を進めることで、家庭や健康、別の仕事など、それぞれの事情を抱えるメンバーが気持ちよく仕事ができていることを話しました。
一方でもちおさんは、もちすけさんに比較的近いお勤めの立場です。数か月前、自分の管理している部署で、社外での仕事が日常的に許可できるよう会社に交渉していました。今では管理職の自分も、持ち出し専用パソコンと趣味の釣り道具を抱えて、各地を飛び回りながら仕事をしているそうです。
皆であれやこれやと作戦会議して、もちすけさんも希望が持てたようです。今度、東京でもちおさん直々に、もちすけさんの会社に相談に乗りに行くことに。

 

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食卓を囲み、へしこ(さばの糠漬けの伝統料理。お酒に合う)をつつきながら、他にもいろいろな報告や相談が交わされます。

もちおさんは福井での滞在期間を終え、次の滞在先を探している様子。他地域連携担当として、全国各地で情報を集め、居候先を開拓している流動創生スタッフの山岸さんから、隣県の拠点情報を教えてもらっています。山岸さんもちょうどそちらに向かう予定があり、2人で日程を合わせてライドシェアすることになりました。

同じく流動創生スタッフの宇野さんは、各地の質の高いものづくりを扱う行商人。普段は拠点にいながら情報収集したり、品物を遠隔で買い付けたりしていますが、来週いっぱいは大阪で焼き物販売の企画をする予定です。旅の料理人と組んで、焼き物に合う料理を提供し、気に入った品を買ってもらうのです。
食材の一部はもちこさん経由で畑の野菜を卸してもらうので、来週初めの収穫見込みをもち子さんから報告。また、宇野さん不在時の拠点管理はもち子さんが対応することになっているので、拠点運営に関して必要な情報を引継いでもらいました。

今夜は急に人数が増えてお布団が足りない…ということで、もちすけさんと荒木さんは、隣の隣の集落で空き部屋を提供してくれている西川さん宅にお邪魔することに。そちらでも今田んぼの仕事があるようなので、もちすけさんは明日の朝から早々にどろんこになりそうです。

もち子さんはもちすけさんを見て、自分が初めてここに来た頃のことを思い出すのでした。

駅にもコンビニにも歩いて行けない場所なんて…って、最初は不安だったけれど、数週間過ごすだけでこんなにイメージが変わるんだな。もちろんここよりももっと不便な場所はあるけれど、そこにはそこで暮らし方がある。助けてくれる人もいるし、私たちが手を貸せる人もいる。そんなこと、東京の一つのアパートにずーっと住んで、一つのオフィスにずーっと勤めていたら気付かなかった。

もちこさんは今の仕事が終わったら、いったんベンチャーを離れて、別のプロジェクトの立ち上げに1年限定で参画することになっています。これまでまったくやったことのない分野だけれど、人事の人は「業界を飛び越える人材が増えるのはうちの会社にとっても、社会にとっても利益だから」と、新参者のもち子さんを歓迎してくれています。

新しい場所、新しい仲間、新しい自分との出会いに、胸を膨らませるもちこさんなのでした―――

このお話は、流動創生拠点の数年後を想像したフィクションですが、畑の仕事や拠点の利用方法などは、現在の運用や、実際に滞在した方々の活動をベースにしています。この光景を福井の拠点で、あるいは全国の様々な地域で見る日も、そう遠くないでしょう。
農に触れながら生き生きと働くフリーランスのもちこさん、趣味で旅するベテラン管理職のもちおさん、これからの働き方を考える若手のもちすけさんに、それぞれの活動を展開している流動創生のメンバー。これを読んでいるあなたとも、日本のどこか、世界のどこかで出会えるときを楽しみにしています。

文・イラスト:荒木 幸子(FlowLife Laboratory)

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