2016.04.22 Voice #002

「何となく気になるのは、そこに何かがあるということ」ツジマミさんと“インド”の出会い

 日本とインドを行き来し、インドの伝統的な布染めに使われるウッドブロック(木のハンコ) 、インドの布を使ったお洋服、雑貨をプロデュースしているdesign labo chica(デザインラボチカ)代表 ツジマミさん。今回は、海を越えた2拠点でのライフワークの実態、その世界観に迫ります。

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「やりたいことでなければ力は発揮できない」

―インドと日本を行き来する生業を始める前は、どのような暮らしをしていたんでしょうか?

ツジ:生まれは広島で、大学時代まで広島にいました。23歳のときに、大学で出会った今の旦那さんの実家がある福井に住むようになって、県内で事務の仕事などをしていたけど、自分の中で全然しっくりこなくって。

昔から仕事は「やりたいことをやりたい」という気持ちがあって、人が集まる心地よいところをつくりたい、なんとなくカフェかなぁと思っていました。それで福井市内の カフェで働くことになったんですけど、そこのオーナーさんは本当に面白い人で。「自分で稼げ」「自分にできることがあったらどんどん提案してやったらいい」って言ってくれる人で、だったら私チラシつくりたいです、フリーペーパーやりますって自分から提案していく中で、お店の名前でコーヒーの移動販売もすることになりました。いろんなことにチャレンジさせてもらったことは良かったですね。

そこでの仕事は楽しかったけど、人のお店の看板を背負ってやることの難しさとか、決められた範囲内でしかできないもどかしさみたいなものも感じました。カフェに関わってたのは3年くらいだったんですが、違和感を覚えてきたんですね。

自分が好きなこと、楽しめることじゃないと力が発揮できないというのはわかっていたので、じわじわと「なんか違うかも」「自分のやりたいことはカフェじゃないかもしれない」って思い始めて。タイミング的にいろいろなことが重なって、一度カフェの道を進むことをやめてみようと思ったんです。
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そんな頃、ぽっかり時間があいたときがあって、 ふわっとインドが出てきた(笑)

インドを日本に持ち帰る!20日間の旅行で怒涛のスタートアップ

―なぜ、他の国ではなくインドだったんでしょうか?

ツジ:インドは昔から、なんとなく気になってはいました。お気に入りのショールが「Made in india」だったり、手塚治虫の「ブッダ」を読んで興味もあったし、カレーも好きだったし。自分の身の回りのキーワードが「これもインド?あ、これもインド?」って気づいたんです。

それでインドに行ってみたら、インドの人の感覚と暮らしぶりが面白かった。私の知ってるインドの人って、日常のコミュニケーションの中でも「楽しんで生きないとだめだよ」というような言葉をよく口にするんですね。「生き物が生きている、それだけでいいのだ」という、生きることについての哲学を日々交わしている気がします。そのシンプルで地面に近いようなインドの感覚が面白い、触れていたい、日本に持って帰りたいと思いました。
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はじめてのインドは日本から出発する”インドの手仕事ツアー” に参加して行きました。そのツアーはインドのいろんな村に行って、自分で織りのラグや染めのベッドカバーを作って持って帰る という10日間くらいのツアーだったんですけど、私はツアーの後10日間延長で滞在することになっていました。そこで、インドを仕事にする!と決意し、残りの時間で何ができるかなって考えたときに、ツアーで行ったウッドブロック(木のハンコ)の工房にもう一度行って、オリジナルデザインのウッドブロックを作ってもらうことにしたんです。

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もちろん、私も行くときはインドで仕事するなんて思ってなかった。日本にいる旦那さんに電話して「私インドで仕事する!」って言って(笑)。彫ってもらったオリジナルのウッドブロックの他にも、カワイイ!と思ったショールとか、雑貨とか、とりあえず買い込んで日本に戻りました。

ご主人:新大阪駅に迎えに行ったら、行商でもするのかってほど山のような荷物を背負って帰ってきたので驚きました(笑)。

ツジさんはウッドブロックや雑貨の展示会、ワークショップをはじめ、次の年には、オリジナルのブロックプリントの布や、その布を使ったお洋服づくりも始めることになったのでした。

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インドと日本でやりとりするお洋服づくり

―ご自身でお洋服のブランドも作っていらっしゃいますが、ツジさんがお洋服全体のデザインをしているんでしょうか?

ツジ:生地選びや染め、縫製のオーダーは私が現地のファクトリーに行って直接やりとりしているんだけど、 お洋服の形については日本人のパタンナーさんに相談したり、自分でも試行錯誤しながら作っています。
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今、日本からインドへ遠隔でデザインの指示やできあがった製品の送付などのやり取りをするための仕組みを準備しているところです。向こうで動いてくれるインド人のスタッフが1人います。私が最初にインドに訪れた時のツアーのお手伝いをしていた男の子で、会計士の勉強をしている学生なんだけど、家族のために家を建て替えたい!と勉強しながら働いているんです。やる気もあるし、頑張り屋で信頼できる子です。形式だった雇用というのではなく、バイトという感じでお礼を渡しています。インドは「私がOKであなたがOKだったらOKです」っていうところがあるから。
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私の会社”design labo chica ”は「つくるちからは、生きるちから。」がコンセプトなんです。つくるちから=創造力は、物だけじゃなく新しい道や生き方をつくる力でもあります。私はお洋服を作ったり、ワークショップや素材の販売や、インドでのいろんなことの発信を通して「つくるちから」を育みたいと思っています。

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今、お洋服については”Mula:working cloth”(ムーラ:ワーキングクロス) というブランド名で製作したものを売ってるんだけど、お洋服でも自分で作る楽しさを知ってもらうことができたらいいなと思っています。いろんな生地の中からお客さんに自分の生地を選んでもらうような、プラスクリエイトなオーダーを受けるとか、簡単なワンピースを縫ってお洋服を自分で作れるようになるワークショップをやってみたいですね。
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―国内でもさまざまな地域に活動の場を広げているようですが、どのように関わりをつくっているのでしょうか?

ツジ:東京、長野、京都、名古屋、岐阜、高知等、好きな街、気になる街に飛び込み営業の遠征をしました。気に入ってもらったお店でウッドブロックのワークショップをやらせてもらったり、雑貨、お洋服の商品をお店に置かせてもらったりしています。営業は行けるときに行ってる感じです。何となく気になる街や人やものごとって、そこに何かがあるんだと思います。コトバにはできないけど、その感じを大切にしています。
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全国どこにいっても雰囲気の似た人たちがいて、今、そういう人って遠隔で繋がってる気がします。実際に、私の作るお洋服や雑貨のことを気に入ってくれている友人や知人が「この人と会ってみたら?」と繋いでくれることも多いです。そういう場に出会えれば次に繋がるような気がして、そのきっかけを探しにあちこち行ってる感じかも。

―インドだけでなく、他の国にも活動を拡げる可能性は?

ツジ:昨年秋にフィンランドに行く機会があったのですが、すごく大人な国だなと衝撃を受けました。インドとは別の種類の衝撃ですね。快適な暮らしってなんだろうっていうのを真摯に、丁寧に考えていて、いいものがちゃんと評価される気がする。いつかフィンランドで展示会等できたらいいなと思いました。いろんな国のいろんな視点を吸収したいし、いろんな国で作品を発表していきたいです。

―最後に、ツジさんのように自分らしい暮らしや仕事を模索している人へメッセージをお願いします。

ツジ:私が大切にしていることは2つあって、まず1つ目は、本気でやりたいことをやって本気で楽しむこと。 いい!おもしろい!と本気で思っていることしかやらないから、ウソがないし、「これいいでしょ!」って本気で伝えられる。違和感へのストレスがありません。

それから2つ目は、どんどん人を頼って、人の助けになること。私の場合、たった30年くらいの人生経験からひとりで考えられることってたぶん思う以上に少ない。だから、いろんな人に相談したり、助けてもらっています。悪いとか遠慮せずに。本当の友人、本当にすばらしい人はちゃんと助けてくれる。そう思います。その分、自分もほかの人の背中を押したり、力を分けてあげられたらいいんだと思っています。

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それからなにか違うと思ったら、もがいてみたらいいと思います。いつもと違う人に会って話を聞いたり、今とは違う環境や場所を見に行ってみたり。ぐるっとまわって「今居るところが自分の場所だ」なんて気付くことがあるかもしれないけど、自分に合った働き方・生き方をつくる方法がわかってくるかもしれない。
動いていたら、何か糸口が見つかって、少しずつ自分の道が見えてくると思います。

聞き手・文=荒木幸子(Takshif)、写真=山岸竜也、写真提供=ツジマミさん

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