2018.06.17 Voice #009

【イベントレポート】流動創生CrossOver 関係人口の分解と再構築[中編]~被災地の関係人口

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流動創生の都内イベントシリーズCrossOver。3月22日に開催した「関係人口の分解と再構築」では、地方活性関係者の間で注目を集め始めた「関係人口」について、学識者・実践者・地方関係者をお招きし、クロストークでお話を伺いました。今回はそのイベントレポート中編をお送りします。
(前編はこちら

登壇者
国際大学GLOCOM准教授 庄司昌彦(しょうじ・まさひこ)
ヨハクデザイン 武田明子(たけだ・あきこ)
釜石リージョナルコーディネーター 手塚さや香(てづか・さやか)
流動創生企画運営 荒木幸子(あらき・さちこ)

「定住」の高いハードル

荒木 そうしましたら、次に受入地域側としての釜石の事例をお話頂こうかと思います。
  
手塚 改めまして、岩手の言葉でいうと、おばんでございます。岩手県の釜石市からまいりました手塚と申します。ここで聞くの怖いんですけど、敢えて聞いてみます。釜石市に足を踏み入れたことあるよって方はいらっしゃいますか。
  
荒木 4人? 5人?
  
手塚 岩手には行ったことあるよって言う人は?
  
武田 あ、すごい。たくさんいますね。
  
手塚 このギャップがけっこう激しいというか、やっぱり釜石市は遠いんだな、ということをあらためて実感していますが。釜石市は、青森と宮城にはさまれた岩手県の沿岸にある、社会科で習うリアス式海岸の沿岸部の中の真ん中よりちょっと南にあります。
私は個人事業主として釜石市と業務委託の契約を結んで、市の復興支援員の組織である「釜石市リージョナルコーディネーター」、通称「釜援隊」という組織に所属しています。具体的に何をしているかというと、釜石地方森林組合という、基本的には丸太を販売している組織で、新しい事業の立ち上げなどを担当しています。また、前職が新聞記者だったこともあり、フリーランスのライターとして原稿を書く仕事や、岩手移住計画という任意団体をUターンの友人たちと作って活動をしています。
  
私自身は埼玉県さいたま市の出身で、よく「なんで釜石に来たんですか」と地元の方にも聞かれます。
震災より遡ることだいぶ前、大学を出て新聞社に入りました。新聞社の新人はだいたい最初地方勤務なんですけど、たまたま配属先になったのが岩手の盛岡です。そういう縁があって、岩手で4年間新聞記者をしていて、その後は東京・大阪に転勤をしたりして。震災後、また岩手に足を運ぶようになって、けっこう勢い余って転職をしたというような感じです。
  
私たちがやっている岩手移住計画というのは、私自身は移住者、あと2人のメンバーである藤野と高橋も岩手出身のUターンで、今日は多拠点とか関係人口がテーマなので言いにくいですが(笑)、岩手にどんどん移住してねみたいなことをしている団体です。
  
震災から7年間経ちましたが、復興支援などで岩手に来てくれたけどやっぱり帰っちゃう人が多いです。それはそれでいいんですけど、悲しいかな、住み続けたいんだけどその地域になじめなかったり孤立してしまったりする方もいるので、そういう人をなくしたいと思って活動しています。移住者同士の交流会をしたりとか、岩手暮らしを体験してもらうようなツアー、多拠点とか二拠点居住みたいなテーマで移住のツアーも組んだことがあります。
  
これまでの3年間で約120名の参加者がいて、20人が実際にUターン・Iターンしたという実績はあるんですが、10名に1人と考えると、いくら促進しても移住定住というのはやっぱりハードルが高いよな、と私たち自身も感じています。
掘り下げて考えると、都市部に住んでいる人たちが思う「地方でこんな暮らしがしたい」というイメージと、実際に求人を出している現地の企業さんの業務内容や賃金相場にギャップがあったりする。移住ツアーには参加するけどもなかなか踏み切れない、というのがあります。

震災ボランティアから始まった「関係」

手塚 行政としては定住を目指したいところではあるとは思うんですけれど、私たち岩手移住計画は別にNPOでもないただの任意団体なので、定住というゴールに必ずしもこだわらないで、岩手に関わってくれる人を増やしたいなということで、関係人口を促進しています。それだけでなく釜石や岩手県全体を見渡すと、関係人口という観点ではわりと先進地なのかなと思っています。
  
というのは、2011年の震災以降、フェーズの変化と共にずっとこの7年間、外からの人を受け入れてきたからです。
震災から1年強くらいの間は、がれき撤去のボランティアに毎月来てる方々がいましたし、当時ちょうどフリーランスやアルバイトだった方が岩手に移り住んで活動を始めるということもありました。私自身も仕事をしながら、がれき撤去のボランティアに参加していました。
2013年くらいからは私が所属しているその復興支援員の組織である「釜援隊」の活動が始まったり、経済同友会という大手上場企業の組織が社員を釜石市や気仙沼市の市役所に約2年間派遣する取り組みがあったり、実際に沿岸部に拠点を移して復興支援をすることがけっこう増えました。
私はそういった取り組みが動き始めた2014年の10月に釜石市に移住しました。2015年くらいからは、釜石市で大学生の長期インターンの受入や体験プログラムの提供を通じて、意図的に関係人口を増やそうという取り組みをしてきて今日に至ります。
  
さっき、庄司先生のお話にも地方創生の総合計画に関わっていたというお話があったんですけど、釜石市の場合はオープンシティ戦略というものがあるんですね。「つながり人口」という名称で、地域に実際に住んでいる活動人口とコラボレーションして地域を盛り上げていきましょう、といったことが明示されています。
Meetup Kamaishiという体験プログラムもあります。観光より一歩進んだ釜石市を楽しんでもらいましょうといった取り組みです。

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具体的には、地元で有名な醸造会社の味噌づくりをやってその味噌を樽ごと持って帰ってもらったりとか、千畳敷という名所に地域のカメラマンさんと一緒に行って撮影したりとか、植樹活動などもあります。こういう釜石の自然・山・海を体験してもらうという自然をテーマにしたものが多いんですけど、地域の人に「鉄人」という役割を設定して、参加者の案内や指導をしてもらっているんです。
自然がきれいだね、すごいね、というだけではなくて、地域の人と触れ合うことによって、またその人に会いに来たくなる、継続的に釜石市に繋がってもらおうという取り組みをしています。
  
インターンもやっています。今後、民泊の受入をする家のリノベーションをしたり、「浜千鳥」という地元の酒蔵でインターンをする取り組みもあります。
ローカルベンチャーという取り組みは、今全国で10近い団体がやってるんですけれども、地域おこし協力隊の制度を使って3年間最低限の所得を保証するので起業を目指してねというものです。
またローカルベンチャーの中でも、移住しなくても釜石市と関わっていけるというフレキシブルエントリー枠を設けたりしています。

地域活動と外部活動のピラミッド

荒木 ありがとうございます。釜石は被災地の復興支援から始まっているというのもあって、行政がきちんと「まち・ひと・しごと創生総合戦略」の中でオープンシティをうたっているところはやはり強いなと思いました。
逆に行政との間でやりづらいところもあったりするんでしょうか?実際、移住定住人口が欲しいっていう行政と、いやいやそんなに無理言っちゃいけないよ、みたいなジレンマってありますか?
  
手塚 言葉を選ぶところなんですけど、市の動きというのが、例えばその地域にずっといる漁師さんとか市民全員まで届いているわけではないので、いろんな段階でのギャップっていうのは正直あると思います。
  
釜石市も人口35,000人いるんで、その中で本当にずっと地域を支えてきた地域住民がいて、そこからまたU・Iターンの人もいて、協力隊もいて…という一方で、逆ピラミッド型みたいのもあるんです。自治体の施策としてMeetup Kamaishiみたいなものがある。

地域住民ピラミッド

私の中でも関係人口と呼ばれる人たちの、継続性というか、出口、ゴールというのがまだわかっていなくて。税金の話もあって実際に住民票を移してくれる人を増やしたいっていうのが自治体の思いなので、そうなると関係人口はステップを踏んだら移住だよねっていうふうになってしまうと思うんです。
だからこそ、関係人口と呼ばれる人や、これからなりたいという人たちがいったい何を求めているのか、一方で地域はどういう関わり方をしてくれたら嬉しいのかっていうところを、私たちみたいな立場の人間が繋いでいく必要があるのかなと思ったりしています。
  
荒木 関係人口側も、いろいろ活動していく中で移住に傾いていく人もいたりするのを考えると、その人の状態によってサポートの内容が変わってくるというところはありますよね。
  
庄司 釜石は釜援隊も含め、下のピラミッドの上のほうあたり(協力隊等)が温まっているというか、いろいろ動いていて面白そうだな、と思いました。
人数の問題より、温まっているかどうかがけっこう大事で、冷え冷えの三角形に行く気にはならないですよね。全部が盛り上がっていろんなことが起こっていればベストだと思いますけど、量に関わらず、ピラミッドの上と下、つまり外部よそ者側の活動と地域住民側の活動関係していることが大事なのかなあと思いました。

住民の思いとヨソモノの望みを繋ぐ

手塚 実際に現場として地元の人たちが「関係人口」と呼ばれる存在についてどういう風に思っているのかなあっていうのを私が感じているところでいうと、大きくは3つです。
1つは、お祭りだったりイベントだったり、一緒に神輿を担いでくれる人が来てくれたら嬉しいなあという意見ですね。
2つめは、漁師さんに伺ったところで、震災後、牡蠣やホタテの殻とかロープの掃除などのお手伝いに学生や若い人たちが来てくれる人はありがたいんだけれども、それは実は「お手伝い」ではなくて「体験」なんだよねという意見。体験の場を提供するにもけっこう手間がかかっていて、それでもやっぱり自分たちの仕事を知って欲しいし、牡蠣なりホタテなりのファンを増やしたいなあって思いがすごくあって、受入に協力してくれています。
企業さんからも、消費者のニーズを知りたいから、来てくれた人たちにフィードバックしてほしいなっていう話も聞きます。
3つめとして、でもやっぱりお金を落として欲しいよね、色々買っていって欲しいなという率直な思いもあるようです。
  
荒木 関係人口側も一人ひとりできることが違うし、何を求められているのかわからないというところもあったりするので、地域側の「こんなふうにしてほしいな」という声が届いたり、「ああ、それ嬉しいな」という声が返ってくるというのも大事なのかなと思います。
  
手塚 そういう意味では私自身も岩手にある程度長く住んできて、関係人口と呼ばれている人がいるとしたら、どういう人なのかなっていうのがすごく興味があります。
稼ぎたいと思っているのか、別にそうじゃないのか、何かしらインターンみたいに学んだり、吸収したりしたいのか、もしくはボランティアで貢献したいのか、とか。このあたりが明確になってくると、その人たちの滞在場所をはじめ、いろいろこちらが考えやすいし、付き合い方がわかるかなと思いますね。
  
荒木 「or not」がちゃんとついているのがすごく大きいと思っています。地域によっては、きっと稼ぎたいんだろう、きっと地域に貢献したいんだろうみたいに勝手に決めてかかるところもあったりするんですよ。だから、間に立ってる人が、そうじゃないかもしれない、ニーズが違うところにあるかもしれないってところに思いを馳せてあげる地域はいいなと思いますね。
  
手塚 例えば、移住や関係人口のコーディネートみたいなことを、ビジネスにできないかなと考えている人もいますね。あと、私は全然わからないんですけど、岩手移住計画のメンバーの中で、けっこう仮装通貨やブロックチェーンに詳しいメンバーがいるので、彼からは例えば高齢者と一時間お茶を飲んでくれたら、その価値をトークン(モノやサービスと交換することができる代替通貨のようなもの)にして、どこかのお店でご飯を食べられるサービスみたいなものが出来たらけっこう来やすいんじゃないかなとか、そういう話も出たりしてます。システム的に出来るかどうかはわからないんですけど、地域も受け身なだけではなくて、一緒に面白い関わり方が考えられたらいいんじゃないかなと。

「学びの場」としての地方のポテンシャル

庄司 なんとなく今、移住した上で更に起業しなきゃいけないみたいなところありますよね(笑)。ハードル高いなあって。
例えば僕なんかは好奇心があるので、学びたいっていう気持ちはわりとあるんですね。東京葛飾生まれ埼玉育ちで、ほとんどこの東京エリアにずっと住んでるし東京好きですけど、ただ人生100年時代と言われる中で、100年ここに住んでいようとは思っていないんですよ。それこそ農作業なのか漁業なのかわかりませんけど、自分の人生を豊かにするために、ある時期ちょっと地方に滞在して何か身に着けてみたいなぁということは思うんですね。
だから、そういうことをしに行って、仕事はそのまま企業の一社員として働き続けます、みたいなことも全然ありだと思うんです。地方が間口広く「学びにおいで」と言ってくれてもいいんじゃないかなと。
  
手塚 実際問題、定住しますって来ても1か月で帰っちゃう人とかいるわけじゃないですか。なので、そういうふうに2年間くらい学びたいけれど社員のままでという人もいいと思うし、地域の企業さんのほうも、そういう多様な働き方や人生設計を受け入れられればいいなというのはありますね。
  
庄司 そうですね。学びって1回学んで帰ったとしても、もう1回学びに行こうかなと繰り返したり、ディープに付き合うことになるので、関係づくりにいいとは思うんです。。
  
手塚 今は学生のインターンの受入がほぼメインなんですけど、そういう社会人の学びの受入も、企業にとっても本人にとっても有効かなと思います。
 
(後編へつづく)
  
文=荒木幸子(FlowLife Laboratory) 写真=山岸竜也 画像提供=手塚さや香

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