2018.06.20 Voice #010

徒歩探索でエリアを理解する、熱狂を生み出す。コミュニティビルダー柴田大輔さんの”パトロール”の真髄


多拠点居住やタイニーハウス提唱の先駆けであるYADOKARIさんが、「建築物のないスポット」(駐車場の上にコンテナハウスが駐車しているという状態)として2016年スタートしたBETTARA STAND日本橋。今年3月、大勢のファンに惜しまれて、約1年半の「第1章」に幕が下りました。

このBETTARA STANDで年間200本以上のイベントを手掛け、「新章」とも言うべき新たなスポット、Tinys Yokohama Hinodechoで引き続きコミュニティビルダーとして、また個人として活動を展開している、「イベントジャンキー」柴田大輔さん。
そんな柴田さんが提唱しているのが、コミュニティ周辺のエリアを徒歩移動で探索する「パトロール」という活動です。人を繋ぐことと、エリアを流動することにいったいどんな関係が?柴田さんの「移動の哲学」をお聞きしました。

◆柴田大輔(しばた・だいすけ)
1988年秋田県出身。幼少の頃から、家族・学校・社会のコミュニティに疑問を抱く。
鎌倉を拠点にシェアハウスやゲストハウスの運営。他にもカフェ・バル・家具屋に関わりながら、街のコミュニティーづくりに携わる。
2017年4月よりBETTARA STAND日本橋のコミュニティービルダーになり、映画上映・まちづくり・地域と連携した飲食のイベントなどを多数企画する。
2018年5月よりTinys Yokohama Hinodechoのコミュニティビルダーとなる。

仕事×自分の関心事で、町を歩いて探索する

荒木:
柴田さんが提唱している「パトロール」、言い換えるとフィールドワークという言葉になると思いますが、柴田さんはアクションとして具体的にどんなことをしていますか?

柴田:
2つのパターンあると思っています。
1つは、最初からそのエリアの関係者がいる状態でパトロール先に行くパターン。関係者のもっている一次情報にはリーチしていて、そこに繋がっていくだけなので、これは早いですよね。
先日、荒木さんにTRAVEL HUB MIXさんを紹介してもらいましたが、これも、荒木さんっていう一次情報者に僕らを繋いでもらったから、あとは僕と熊谷(旧BETTARA STAND日本橋の同僚)得意の「じゃあイベントっすね!」というアクションになっていく。たぶん7月にイベントやることになりそうです。

もう1つの、まったく知らない場所にいくパターンは、一次情報者に会いに行くときと比べるとちょっと怖さがあるんですけど、パトロールのしがいはあるんで、そこは徹底して分析にかかりますね。
パトロールは基本的に分析です。空間把握というか、人が動いているかどうかを見る。

荒木:
特に具体的な情報、生の情報はどういうふうに集めますか?

柴田:
僕はだいたい銭湯で話しかけてますね。番台にも話しかけるし、お風呂入ってるおっちゃんにも話しかけます。絶対話しかけられるんですよ、だって裸だもん。「この後どこ呑みにいったらいい?」って必ず聞きます。
趣味が5つあって、散歩、銭湯、サッカー、食、呑みの5つ。自分の趣味にひっかかるところに向かっていくとパトロールができるという。サッカーは難しいですけど(笑)。

僕、「旅行」は嫌いなんですよね。旅行って「行かされてる」感じがしません?自分で主体的に選んでないっていうか、自分ゴト化されてない状態でまったく興味ないところに行くのは、ただの疲労なんですよね。
でも仕事で一次情報者に会いに行くのに、パトロールという目的をもって行くと、ものすごい情報がたくさん入ってくるんですよ、移動の間にも。

荒木:
一次情報者に会いに行くパターンの場合は、目的地が明確な一点だから間をすっぽかしがちになりそうなものですよね?

柴田:
だから僕、あまり高速な乗り物に乗らないんですよ。駅から目的地まではなるべく徒歩。自分がそのエリアに可能性を感じているので、やっぱり歩いて町をじっくり見ます。

コミュニティビルダーはパトロールできたほうがいいですね。地域の情報を集めてイベント(繋がり)にするわけです。パトロ―ルってもしかしたら「営業」って言われる可能性もありますけど、ただの営業かと言うとそれだけじゃなくて、歩きながら場所を知ったり、自分自身の考えやアイデアに気づくことのできることだと思うんですよね。


町が動いていること、人が歩いていること

柴田:
僕、生まれは秋田です。若いときに仙台に行って、地方都市のゆるやかな暮らしもよかったんですけど、僕の中で「自分を試してみたい」という思いがあったんでしょうね。やっぱ東京に行くしかないなと思って。
東京に住み始めてサラリーマンをやってました。全国に社員が200~300いるような家具のメーカーでした。まあスタンプラリーが多いわけですよ、決裁の。それに僕は心が折れました。サラリーマンを理解してなかったんです。これは僕が悪い。
いったん生活を取り戻すために鎌倉に引っ越して、シェアハウスやゲストハウスを運営する会社に入りました。そこで人生やり直したという感覚はあります。

ただ、その町は観光地だったんですね。文化的だし、人間関係も良いし、住む場所としては凄くいいんですけど、町自体はあまり「動いている」感じがしなかった。家族層が多くて、ある程度整った状態で住む人が多い。安定領域に入ってるからそれ以上動かないんですよ。ここに来たらみんな成長が止まっちゃう気がして。それは豊かじゃないと思ったんです。
実際に観光客は来てるので、だからほっといても人は来ると思ってる。課題感があまりないんですね。でも、それって今住んでる町の人たちがいなくなったら終わりになってしまう。サステナブルじゃない。

観光客は観光スポットにいるけれど、人が町を歩いていないです。そしてコミュニケーション量が足りない。これは国全体に言えることかもしれないけど。

コミュニティビルダーという仕事

柴田:
人が「熱狂している」っていうのは大事ですね。場や街が、継続的に熱狂しているかどうか。熱狂の継続は地方創生の最大の課題じゃないですか。

荒木:
一人とか個人じゃなくて、事業でもなくて、場っていうのが難しいですよね。

柴田:
最初は一点なんですよ。点、人が集まってくると面ができあがる。例えば、福井で荒木さんと農家さんが仲良くなればそこは線ですよね。もう一か所あれば面になる。コミュニティビルダーはそれをつくる仕事ですね。
おかげさまで、日本橋界隈で僕らは始まりの点はいくつか作ることができたと思っています。

荒木:
BETTARA STANDが一つの点だったと思いますが、一緒に面をつくっていた点は例えばどういったところですか?

柴田:
近くだとANDONさん。何度かイベントでご一緒させていただきました。あとは一緒にお仕事したところでいうと、人形町のSPACEさん。会社の地下室を借りて、映画上映させてもらったんです。

荒木:
オフィスの地下ですか!?

柴田:
人事の方が僕たちのやってる活動に興味持ってくれてたんです。会社の業務領域としては、ショッピングモールの開発など、建築物の内装のお仕事なんです。彼らが言ってたのは「まちづくり」の文脈で、映画上映会を行いました。

会社さんって基本的に数字ありきでモノを語るじゃないですか。でも、数字で表れないその熱狂をつくりだすためには遊休地の活用がいいんじゃないか、となって。そしたら会社の別館の地下が空いてた。普段はただの物置なんですよ。
そこで、社外の人も入れるオープンな地域イベントとして映画の上映会をやったんですね。おかげさまでたくさん方の協力もあり、チケット完売しました。

面白いのはSPACEの社員の方が一番反応してたってことですね。自分たちの場所のはずなのに、こんな遊休地があるなんてそもそも知らなかったし、それをこんな場にすることができるんだ…って社員の方が驚いてました。特に若手のデザインの方たちには刺激になったと思います。

荒木:
クリエイティブな仕事をされてる方が凝り固まっちゃってるのは結構死活問題ですよね。そういう組織の中に、ちょっと変わったものを投げ込むって凄く大事だと思います。

柴田:
SPACEさんもそれをよく受け入れてくれたと思います。僕らはいつだって受け入れる気満々なんですけどね(笑)。

みんながコミュニティビルディングを必要としているんだなと感じます。でも、適当に誰か置いておけばいいってわけじゃない。コワーキングオフィスのただの受付じゃだめで。出会った人に反応してコトをつくりだす、そこからマネタイズする、その後に繋げる。たぶんそういうことをみんなやりたいんだな、でもやり方がわからないんだなと。
BETTARA STANDで1年やってみて今、ノウハウとして他の人たちに提供していかなきゃいけない時期なんだと思ってます。

荒木:
そういう意味でも、BETTARA STANDでのノウハウの蓄積は特別なんでしょうね。

柴田:
BETTARA STANDは僕の人生の伝説ですよ。あんなにかけがえのない1年はそう送れないです。気づいたら自分の人生すら豊かになっていく。
僕らは毎回違うイベントやってるんで、僕らがお客さん以上に豊かですね。これはありがたいことです。

荒木:
スタッフが一番イベントをタダ聞きしてるという(笑)。

柴田:
そうそう、そういう状態(笑)。


自分を理解されたいから、自分も世の中を理解しに行く

荒木:
パトロール、フィールドワークという言葉は一見地域の話のようですが、柴田さんは、おそらくもっと広義で、地域に対してだけでなく人に対して、場に対して、あるコミュニティ、会社組織に対して、探索の触手を広げているという感じがしますね。

柴田:
何故探索するのかっていうと、欲求もあると思うんですけど、欲求の前に葛藤があるんですよね、僕の場合。探索しないとわからないからです。家にいても始まらない。本質的なことが見えてこない。

荒木:
世の中を、社会を理解できていないことに対する葛藤?

柴田:
自分が理解されにくい者だという自覚とともに、理解されたいという欲求がある。自分をちゃんと伝えるために、まずは自分が世の中を理解しなきゃいけない。そういう葛藤が常にあります。
外に出てちゃんと発信したり繋がりをもたないと、理解されたいというだけではエゴでしかないから。外との繋がりを閉鎖させないためというのはあるかもしれません。

会社と家がすべてという人たちがいるとしたら、やっぱりライフスタイルを確立するために外に出るっていうのが、僕は豊かなんじゃないかなって思います。外に出ていって人と話す。今は平和です。この国は自由と平和に溢れてます。東京なんてどこも超アクセスいいじゃないですか。東京全部が「アクセス」そのものみたいな。

面白い若者が増えてほしいなっていつも思っています。今度、学生向けにお話もしますが何をぶっこんでやろうかなと(笑)、毎日考えています。

昨今は都市と地方、地方と地方の間、という長距離の人の「移動」に注目されがちですが、実は狭域を探索すること、触手を広げることも重要な「移動」の活動です。
地域の人たちと同じ目線に立って理解し、情報収集しながら、同時に、動き回る者ならではの経験や選択肢を活かして地域に情報提供し、ともに価値を創出すること。
エリアを「自分ゴト化」しながら渡り歩き、熱狂を生み出し続けている柴田さんの取り組みに、土の人とともに歩む風の人の可能性の一つを見出だすことができました。

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