2018.07.18 Voice #011

【イベントレポート】流動創生CrossOver 関係人口の分解と再構築レポート後編~手段としての関係人口

流動創生の都内イベントシリーズCrossOver。3月22日に開催した「関係人口の分解と再構築」では、地方活性関係者の間で注目を集め始めた「関係人口」について、学識者・実践者・地方関係者をお招きし、クロストークでお話を伺いました。今回はそのイベントレポート後編をお送りします。

(前編はこちら)(中編はこちら

 

国際大学GLOCOM准教授 庄司昌彦(しょうじ・まさひこ)

ヨハクデザイン 武田明子(たけだ・あきこ)

釜石リージョナルコーディネーター 手塚さや香(てづか・さやか)

流動創生企画運営 荒木幸子(あらき・さちこ)

 

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自分の中に「ヨハク」をつくる

 

荒木 では次はヨハクデザインさんから「旅するデザイナー」のお話、よろしくお願いします。

 

武田 よろしくお願いします。武田明子と申します。
「旅するデザイナー」と言っているので、「地方に仕事があるから行くんですか?」ってよく聞かれるんですけど、クライアントは基本的に東京の広告代理店さん、企業さん、個人事業主、大きくこの3つの柱で成り立っています。
家電量販店で見るような等身大パネルやのぼり、あとはドラッグストアの販売什器だったり、あとはスーパーのいわゆるPOPという印刷物をデザインする仕事等です。
最後に6年間勤めた会社が、残業が多かったり、相当ハードなお仕事でした。責任感もあって充実はしてたんですけど、どれだけ頑張っても昇給しないとか、産後の時短勤務になったときに十分に生活できるだけのお給料がもらえないっていうシステムだったり、社外との交流がなかなか無くて取引先としか会わない生活だったり。
毎日必死で仕事をしていて、自分の中に空白の部分、余白部分がないなっていうのに気づいたんですね。自分の中の余白の部分をつくろうと思って、「ヨハクデザイン」という社名を2014年に決めました。
残業が多くなってしまっているなら、裁量を持てる働き方を自分でつくろう。ハードな仕事なんだったら、もっと寝れる働き方にしよう。どんなに頑張っても昇給しない仕組みだったら、頑張っただけ報われる仕事にしよう…そういうふうに仕組みを自分で作るしかないな、と考えたんです。

複業・多拠点の旅は生命力を高める

 

 

武田 デザインの仕事だけをしていると、その会社の中でうまく立ち回れるようになって、デザイナーとしての評価は上がってくるんです。でもパソコンが無いと私は何もできないんですよ。あとWi-Fiと電源が無いとものすごく弱い存在です。
そのことに気づいてから、デザイン以外にもやったことのない仕事をやろうと思いました。

 

それと、会社と家の2か所の往復で毎日毎日消費してるなって思って、それ以外の場所があるんじゃないかっていうのを自分で研究したかった。

 

まず最初にやったのが新宿の歌舞伎町でスナックの接客業。1年半くらい、週に1回だけ、日曜日の夜にお店を借りてカウンターバーで1日店長やってました。「集客しなきゃいけない!」と思ったので、デザイナーですし、チラシも作ってみたりしてました。
あと、地方に行ったときは各地で和食器を仕入れて吉祥寺で販売していました。
徳島の神山というところですだちの収穫もさせてもらいました。すだちって全部取らないといけないそうなんですよ。身を残してると木の栄養が取られるので、全部頑張って取らなきゃいけない。
福井県南越前町の荒木さんのところでは、地域の運動会に参加しました。参加するだけの予定だったんですけど、写真記録のカメラマンもやらせてもらいました。おじいちゃんおばあちゃんの玉入れが一番かわいかった。
それ以外に最近相談を受けているのが、ゲストハウス運営等の支援やコンサルですね。

 

百の仕事ができる、百の名字を持った人っていうのが、百姓って呼ばれてたんですね。私も百姓になりたくて、現代版百姓プロジェクトって言っています。

場所も、旅する前は2か所だった拠点が、今ではものすごく増えた。2017年の6月に、東京で固定的に持ってた仕事を全部手放したんです。スナックも辞めました。その後の旅はひどかったです(笑)。月に6日しか自宅にいないかったときもある。平均すると月の3分の2くらいはだいたい地域に出てますね。

 

旅をすることで、自分の生命力が高まっている気がします。すだち収穫できるようになったとか、柿がむけるようになったとか、生きる手段を身に付けて武器にしていくというサイクルを、いま自分でつくり出すことができている。

 

ただ、援農などは、マネタイズを先行しないようにしています。すだちの収穫のプロの前で「時給いくらでやらせてください」って言ってしまうのって失礼だな、と思っています。現物支給っていうのもよくありますね。損得勘定から入るのではなく、直感を大切にすること、予想外の展開を楽しむこと。

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旅も、ワークスタイルも、関係人口も「手段」
幸せな環境を自分で作り出せる状態が「目的」

武田 旅をすることも、フリーランスで働くことも、会社を経営していることも、全てただの「手段」です。手段なので旅を辞める可能性は当然あります。デザイナーも辞めるかもしれないし、別に一生やろうとは思っていない。
私にとって大事なのは、家族やパートナー、自分自身が幸せだと感じる環境を、自分が作り出せる状態にするということ。この「目的」のために、じゃあ何がいいんだろうと考えた結果、今のベストは旅やフリーランスや会社経営だったというだけです。

 

関係人口にはなろうと思ってなるものじゃないと思ってます。私も東京で受注した仕事を持って、好きな場所にいるだけです。別に地域に貢献したいっていうのはないんですよ。
地域に仕事があるから旅をしているんですかって聞かれるんですけど、地域にデザインの仕事の営業はしない主義です。きっとそれぞれ地元のデザイナーさんがいるはずなので、わざわざ私が行って仕事を奪うのはとても失礼だと思っています。
ただ、頼まれると断れない時もあるので、行った先で「じゃあちょっとこれもお願い」みたいなことを受けることも最近増えてはいるんですけど。

 

「それって関係人口だね」って後から肩書をくっつけてもらった。受入側が価値を感じたら、あなたは関係人口だねって言ったらいいと思うんです。

 

荒木 ありがとうございます。
武田さんはいつも「地域に貢献する気はない」みたいにずばずば言うんですけど(笑)、さっき「デザインの仕事を地域の人から奪わない」っていうのもあったように、間の取り方にすごく気を遣ってらっしゃる方なので、決して地域に冷たいというわけではないです。

 

武田 自分がそんな地域に貢献していると思っていないんです。デザインの仕事で、代理店には少なからず貢献できてるとは思うけど、地域に入ることで美味しいものを食べたり、享受している側なので、そういった価値を生み出す労力だったり、生活している人には絶対敵わないです。

 

荒木 ただの発信であっても地域が喜ぶ部分はあるので、自分の楽しみと地域の人たちが喜ぶことが、一つ一つうまく繋がっているタイプという感じはします。

武田 関係人口ってどうやったらなれますかって聞かれませんか、皆さん。

庄司 そもそも「人口」って言った時点で「集団」ですよね。

荒木 やっぱり行政側の視点というか。総務省文書の中で敢えて名前をつけるとしたら、関係人口なのかなと。実際、行政側の納得しやすい文言ではあるので、いかに使うかみたいなところかなとは思いますね。

一時の生活の場として、地域とどう関わるか

武田 私、この5月に岩手に引っ越しを予定しているんですけど、それをかたくなに「移住じゃない」って言ってます。そもそも兵庫県出身なので、いま神奈川に住んでるのも移住じゃないですか。
これからは「動く家」と「動かない家」の両方持とうと思っているんです。モバイルハウスを作って「動く家」にしたいなと思っていて。パートナーは別に旅したくないらしいので「動かない家」にいる。モバイルハウスだけで生活してみたいと思ったりもしたけど。
このモバイルハウスを、たまたま岩手という涼しいところに置くっていうだけなので、それを「移住ですね、素晴らしい」みたいに言われると違和感があります。今、神奈川の自宅に月の3分の1しかいないんだから、次に岩手に3分の1しかいなくなるっていうことになるだけで、あんまり変わらないと思うんですよ。移住っていうと次の場所に行きづらくないですか?

 

荒木 そうなんですよね。“移住・定住”って何故かセットになっているという。

 

武田 そうなんです。定住すること前提じゃないですか。
2年単位でっていうのもありだと思うし、寒いときに暖かいとこに行くのありだと思うし。心地良かったらもちろん長くいると思うんですよ。それを先に定住って形から入るのがちょっと変な気がする。

 

庄司 (滞在実績の資料を見て)一か所あたりの滞在日数が長いなって思ったんですが、それは何か理由があるんですか。地方に行って打ち合わせだけして帰っていくっていう感じじゃないということでしょうか。

 

武田 そうですね、生活をしたいんです。観光にはあまり興味がないんです。その地域の人が使うスーパーに行って、そこのものを買って食べる。そんな生活がとても好きなんです。ちょっとずつ違うじゃないですか、ローカルなものって。生活の場所を移すのを常にシミュレーションしてたい。

 

手塚 それぞれの場所で、いきなり行って「すだちもがせてください」とかじゃなくて、ある程度カウンターパートというか、誰かしらがいるから行くんじゃないかなと思うんですけど、そういう人をどうやって見つけてます?

 

武田 入り口として一番あるのは移住ツアーですね。移住しませんって言って、移住ツアーに参加するっていう、すごい嫌な人になっちゃうんですが(笑)。
それを許してくれるっていうのはキャパが広い地域なんですよ。「いいよ、来なくてもいいからツアー参加してみて」みたいなスタンスのところは、わりとよそ者を受け入れてくれる。それで一回行ってみて、なんか肌に合いそうだなと思ったら「もう一回行きます」って言って自分で行く。その2回目、3回目で「本当に来てくれた」「じゃあこの人も紹介しよう」みたいな感じで、地域の知り合いが増えていきましたね。

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武田 基本的にみんな、いい人なんですよ、地域の方って。
うちの街の美味しいもの食べて欲しいし、こんな人にも会って欲しいし、ここにも行って欲しいし、っていうホスピタリティが溢れてるんですよ。ただ、そんなにしてくれなくても大丈夫だよ、っていうのは言いたいですね。
地域って金銭は無いにしても、その地域の生産物とか資源がすごく豊富です。だからと言って無償でもらえるのが当たり前の関係は絶対に作っちゃいけない、関わる身として、何を返せるかっていう姿勢でいなきゃいけないなっていうのは思っています。

 

文=荒木幸子(FlowLife Laboratory) 写真=山岸竜也 nanaha okubo

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